tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

格差問題に深い洞察を

2016年02月28日 10時45分31秒 | 社会
格差問題に深い洞察を
 ちょうど1年ほど前、「格差の拡大:マルクスの時代、ピケティの時代」を書きましたが、やはり格差の問題は、世界のあらゆるところで深刻な問題を起こしているように感じます。
 
 資本主義と社会主義・共産主義が対立軸になっていた時代、まだマルクス経済学がサバイバルをしていた時代、人の心の中には、何か格差の拡大に対する違和感や警戒感があったような気もします。

 ベルリンの壁が崩壊し、共産主義が自壊し、地球上を資本主義が覆うようになってから、改めて人類社会に対して「格差の拡大」という問題が大手を振って新たな挑戦を仕掛けてきたような感じがして仕方ありません。

 このブログでは。資本主義が生き延びたのは、ミクロの世界、企業経営においてはいわゆる経営者革命で資本家が後退、経営はプロフェッショナルとしての「経営者」に委ねられるようになったこと、マクロの世界では、「社会保障、福祉国家の概念」が国レベルで具体的な進展を見たことの2つが主要の理由ではないかと考えてきました。

 しかし、「資本」の逆襲はすでに始まっていたようです。その主要な担い手は「金融資本主義」の旗手たちです。
 もともと「資本」そのものには意思はありません。しかし、マルクスの時代と同じように、人間は金(資本)を握ると「強欲」になるようです。
 資本を持った人間が「強欲」になり、さらに巨大な資本を得ようとする。金は使うためにあるのではなく、「規模の巨大さ」を競うためのものになるのです。

 金融資本主義の旗手たちには、それ以外に競い合うメルクマールがないということなのでしょうか。しかしそれは、実体経済の担い手である実業の経営者にも影響を与え、「時価総額」が企業の価値の評価に使われるような現実すら起きています。

 こうした動きを加速するための社会的環境も作られてきているように思われます。政治は金に弱いのでしょうか、より大きな資本蓄積に有利な政策や制度が進められてきているようです。

 アメリカではいわゆるレーガノミックスによって、所得税制の累進が積極的に緩和されました。日本でも累進税率は大幅に緩められてきたことはご承知の通りです。
 マネー資本主義活躍の舞台であるキャピタルゲイン税制は、アメリカは0-20パーセント、日本20パーセント(分離課税)です。

 もちろん格差社会化は、税制だけによるものではありません。雇用構造や賃金制度に大きく影響されます。日本ではこのところ、この問題が大きな課題です。

 問題は、こうした格差社会化が、一国経済、さらには世界経済にいかなる影響を与えるかです。そして、今最も心配されているのは「社会の不安定化」「消費需要の縮小」です。
 格差社会化の進行と、社会の不安定化、消費需要の縮小、経済成長の停滞・・・、こうした問題の根底に何があるのか、深い洞察が、いま、必要なようです。


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